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大規模修繕の基本 約4分で読めます

大規模修繕とは何をする工事か

建物を新しくする工事ではなく、劣化を止める工事

大規模修繕とは何をする工事か

理事に選ばれて、大規模修繕の話が回ってきた。何をする工事なのかを、まず把握したい。

多くの方が最初に思い浮かべるのは「外壁がきれいになる工事」だと思います。結果としてそうなりますが、目的はそこではありません。

大規模修繕は、建物の劣化を止めて、これから先も使える状態に戻す工事です。見た目は副産物です。

対象になるのは「共用部」

大規模修繕が扱うのは、区分所有者の共有物である共用部です。各住戸の中は含まれません。

部位 主な工事
外壁 下地の補修、塗装、タイルの調査と補修
屋上・バルコニー 防水層のやり直し
目地・サッシまわり シーリングの打ち替え
鉄部 階段、手すり、扉などの塗装や更新
給排水設備 共用の配管の更新(回数によって)
共用廊下・階段 床の防水、手すり、照明

このうち、住民の目に触れるのは外壁と共用廊下くらいです。 屋上防水も、下地補修も、住んでいる人からは見えません。

「工事したのに、あまり変わっていない」という声が出るのは、このためです。 説明会で最初に伝えるべきなのは、見えない部分にこそ費用がかかっているという事実です。

修繕と改良は別のもの

工事の内容は、大きく2つに分かれます。

  • 修繕 — 劣化した部分を、元の性能に戻す
  • 改良(グレードアップ) — もとより良い状態にする

この区別が、費用と合意形成の両方に効きます。

修繕は「やらないと建物が傷む」という話なので、必要性を説明しやすくなります。一方、改良は「あったほうが良い」という話なので、住民の意見が分かれます。

  • 宅配ボックスの設置
  • 防犯カメラの増設
  • 照明のLED化
  • バリアフリー化
  • 断熱性能の向上

これらは修繕ではなく改良です。 同じ工事にまとめると、足場を共用できるため効率的ですが、「必要なもの」と「あったほうが良いもの」が混ざります。

見積の段階で、修繕と改良を分けて出してもらってください

合計金額だけを見ると、どこが必須でどこが選択なのかが分かりません。

総会で説明するときも、この区別があると議論が進みます。

専有部との線引き

どこまでが共用部か

判断に迷うのが、住戸に接する部分です。

  • バルコニー — 共用部だが、その住戸が専用で使える(専用使用部分)
  • 玄関扉 — 外側は共用部、内側は専有部とされるのが一般的
  • 窓・サッシ — 共用部として扱われることが多い
  • 給排水管 — 共用の縦管と、住戸内の枝管で扱いが分かれる

管理規約に定めがあります。 工事の範囲を決める前に、必ず確認してください。

最後の項目は、特に判断が難しい部分です。 住戸内の配管まで工事するとなると、各住戸への立ち入りが必要になり、合意形成の難易度が上がります。

「やらない」という選択はあるか

修繕を先送りすることは可能です。ただし、劣化は待ってくれません。

  • 防水層が切れると、雨水が内部に入る
  • 内部に入った水は、鉄筋を錆びさせる
  • 錆びた鉄筋は膨張し、コンクリートを押し割る
  • そこから、さらに水が入る

この連鎖が進むと、修繕の範囲と費用が増えます。 早い段階なら表面の補修で済んだものが、内部まで傷むと構造の補修になります。

つまり、先送りは費用を減らす手段になりません。 支払いの時期を遅らせる代わりに、総額が増えます。

タイルの落下は、安全の問題になる

外壁にタイルが張られている建物では、剥落が人身事故につながる可能性があります。

建築基準法では、一定の建築物について定期的な調査と報告が義務づけられており、外壁の状態もその対象です。「やるかやらないか」ではなく、法令上の義務として扱われる部分があるという点は押さえておいてください。

理事として、最初にやること

工事の内容を細かく理解する必要はありません。次の4つを確認するところから始めてください。

1. 長期修繕計画があるか(あれば、いつ・何を予定しているか)2. 前回の工事はいつ、何をしたか(記録が残っているか)3. 修繕積立金がいくら貯まっているか4. 管理会社から、どんな提案が来ているか

2番目が、意外に出てこないことがあります。 前回の工事の記録が残っていないと、今回の判断材料が減ります。

そして、記録が無いこと自体が、次の理事への申し送り事項になります。 今回の工事の記録は、必ず残してください。

※ 本記事は一般的な整理です。工事の範囲や共用部の区分は、管理規約と建物の条件によって変わります。

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付録:本記事で使用した専門用語一覧

用語解説
大規模修繕長期修繕計画にもとづき、建物の共用部をまとめて修繕する工事。
共用部区分所有者が共同で所有する部分。外壁、屋上、廊下、階段など。
専有部各区分所有者が単独で所有する住戸内の部分。
専用使用部分共用部でありながら、特定の住戸が独占的に使用できる部分。バルコニーなど。
下地補修仕上げの下にあるコンクリートのひび割れや欠損を直す工事。
シーリング目地やサッシまわりの隙間を埋める材料。経年で硬化し、切れる。
改良(グレードアップ)元の性能を超える状態にする工事。修繕とは区別される。
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