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大規模修繕の基本 約4分で読めます

建物診断・劣化調査は何を見るのか

工事の範囲を決める根拠を、ここで作る

建物診断・劣化調査は何を見るのか

大規模修繕の検討で、最初に行うのが建物診断です。

目的は2つあります。

  • 工事の範囲を決める — どこを、どこまで直すのか
  • 判断の根拠を作る — なぜその工事が必要なのかを説明する材料

2番目を軽視しないでください。 総会で「なぜこの工事が必要なのか」と問われたとき、診断の結果が答えになります。

何を調べるのか

対象 調べること
外壁(塗装仕上げ) ひび割れ、浮き、剥離、チョーキング
外壁(タイル) 浮き、剥落、目地の状態
シーリング 硬化、ひび割れ、剥離、欠落
屋上・バルコニー 防水層の状態、排水口、立上り
鉄部 錆、腐食、断面の減少
コンクリート 中性化の進行、鉄筋のかぶり厚さ
給排水設備 管の内部の状態(回数による)

6番目が、他とは性質が違います。

コンクリートは、時間とともに中性化が進みます。 中性化が鉄筋の位置まで達すると、鉄筋が錆びやすくなります。

これは表面からは見えません。 試験によって確認します。

調査の方法

方法 内容
目視 外観の確認。最も基本
打診 叩いて音の違いで浮きを判断する
赤外線調査 表面温度の差から浮きを推定する
中性化試験 試薬で、コンクリートの中性化の深さを測る
コア採取 コンクリートを抜き取り、内部を調べる
内視鏡 配管の内部を確認する

4番目と5番目は、建物に手を入れる調査です。 数か所で行い、全体を推定します。

すべての建物で、すべての調査を行うわけではありません。 築年数、前回の工事、気になる症状によって、必要な調査が決まります。

「なぜこの調査を行うのか」を、説明してもらってください。

誰に依頼するか

調べる人と、工事をする人の関係

ここが、実は最も重要な論点です。

依頼先 特徴
施工会社 工事とセットで実施。費用が抑えられる場合がある
設計コンサルタント 第三者として実施。費用がかかる
管理会社 提携先を通じて実施することが多い

施工会社に診断を依頼すると、その会社が工事を受注する可能性があります。

つまり、必要な工事の量を、自分で決められる立場になります。

不正が起きるという意味ではありません。 ただし、チェックする仕組みが内側にないという構造です。

対策は、複数の見方を持つことです。

  • 複数社に診断を依頼し、指摘の内容を比べる
  • 診断と施工を分ける
  • 診断の結果を、他社にも見せて意見を聞く

指摘の内容が各社で大きく違う場合、そこを掘り下げてください。

「無料診断」を受けるとき

施工会社が無料で診断を行う、という提案があります。

これ自体が悪いわけではありません。 受注につながる可能性があるから無料で行う、という合理的な仕組みです。

ただし、次を理解しておいてください。

  • 無料である以上、受注を前提としている
  • 診断の結果が、そのまま工事の提案になる
  • 断りにくい状況が生まれることがある

「診断を受けたら、必ずその会社に発注する」という義務はありません。 最初にその点を明確にしておいてください。

そして、無料診断の結果を、他社にも見せて構いません。 比較の材料として使えます。

診断の報告書は、必ず受け取ってください

口頭の説明だけで終わらせないこと。書面が、後の判断の根拠になります。

そして、次回の修繕のときに、劣化の進行を比較する材料にもなります。

報告書の読み方

専門用語が並びますが、見るべき点は限られています。

1. どこに、どんな劣化があるか(部位ごとの状態)2. その程度(軽微か、進行しているか)3. 推奨される対応(今回やるべきか、次回でよいか)4. 数量の見込み(補修が必要な量)5. 調査の方法と範囲(どこを、どう調べたか)

3番目を確認してください。 すべてが「今回やるべき」となっている報告書は、判断の材料になりません。

優先順位が示されているかが、報告書の質を決めます。

5番目も重要です。 全面を調べたのか、一部を抜き取って推定したのか。推定であれば、実際の数量は変わり得ます。

診断の結果を、どう使うか

  • 工事の範囲を決める
  • 見積を依頼するときの、共通の前提にする
  • 住民への説明の材料にする
  • 総会の議案の根拠にする
  • 次回の修繕のために保管する

2番目が効きます。 各社に同じ診断結果を渡せば、同じ前提で見積が出てきます。 比較ができるようになります。

5番目を忘れないでください。 12年後の理事が、今回の診断結果と比べて劣化の進行を判断します。

建物診断で起きやすいこと
  • 施工会社の診断のみで、範囲を決めた
  • 報告書を受け取らず、口頭の説明だけだった
  • すべてが「要修繕」となっており、優先順位がない
  • 調査の方法と範囲が示されておらず、推定の精度が分からない
  • 報告書を保管せず、次回に引き継げなかった

※ 本記事は一般的な整理です。必要な調査は建物の条件によって変わります。

中立の立場から、複数社の比較をお手伝いします

大規模修繕laboは、発注者と施工会社をつなぐ窓口です。ご相談は無料です。

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付録:本記事で使用した専門用語一覧

用語解説
建物診断建物の劣化の状況を調べる調査。
打診調査叩いて音の違いから、浮きや剥離を判断する調査。
チョーキング塗膜が劣化し、粉状になる現象。
中性化コンクリートがアルカリ性を失っていく現象。鉄筋が錆びやすくなる。
かぶり厚さ鉄筋の表面から、コンクリートの表面までの厚さ。
コア採取コンクリートを円柱状に抜き取り、内部を調べること。
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