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大規模修繕の基本 約4分で読めます

修繕を先延ばしにするとどうなるか

支払いの時期は延びるが、総額は増える

修繕を先延ばしにするとどうなるか

積立金が足りない。住民の合意が取れない。そうした理由で、工事の時期を先送りするという判断があり得ます。

時期を延ばすこと自体は、選択肢のひとつです。 建物診断の結果が良好であれば、合理的な判断になります。

ただし、それは「費用を減らす手段」ではありません。

劣化は、連鎖する

外壁や防水の劣化は、そこで止まりません。

1. 塗膜やシーリングが切れる2. そこから雨水が内部に入る3. コンクリートの中の鉄筋が錆びる4. 錆びた鉄筋は膨張し、コンクリートを押し割る5. 割れた部分から、さらに水が入る

この連鎖が進むと、修繕の範囲が変わります。

早い段階なら表面の補修で済んだものが、内部まで進むと構造に関わる補修になります。

そして、下地補修の数量が増えれば、そのまま工事費が増えます。

費用が増える構造

先送りによって増えるもの
下地補修の数量(ひび割れ、欠損の量)
タイルの浮きの枚数
内部の劣化への対応
漏水が生じた場合の、住戸内の補修

つまり、待っている間に工事の量が増えます。

そして、工事費そのものが変動します。 資材や人件費の水準は、時間とともに変わります。先送りした期間の分、単価の前提も変わります。

「今なら◯円、5年後なら◯円」と断定はできません。 ただし、工事の量が増えることは、劣化の進行から予測できます。

タイルの剥落は、性質が違う

落下は、人に危害を加える

他の劣化と、扱いを分けるべき部位です。

外壁の色あせやシーリングの劣化は、放置しても直接誰かに危害を加えることはありません。

タイルの剥落は違います。 高所から落ちれば、人身事故になります。

そして、建築基準法にもとづく定期報告制度があります。 対象となる建築物では、定期の調査と報告が義務であり、報告を怠った場合や虚偽の報告をした場合には罰則の対象になります。

費用の都合で先送りする判断の対象には、なりにくい部分です。

浮きが見つかっている場合、優先して対応してください。

漏水が出ている場合も、性質が違う

すでに水が入っている状態は、進行中の劣化です。

  • 内部の鉄筋が錆びている可能性がある
  • 住戸内に被害が出れば、その補修も必要になる
  • 階下への漏水は、住民同士の問題になる

「様子を見る」という判断が、最も取りにくい状態です。

責任の問題

管理組合は、建物を適切に管理する立場にあります。

劣化を認識していながら対応せず、それが原因で事故や被害が生じた場合、責任が問われる可能性があります。

  • 落下物による人身事故
  • 漏水による住戸内の被害
  • 第三者の財産への損害

「診断で指摘されていたが、対応しなかった」という記録が残っている場合、特に問題になります。

逆に言えば、診断の結果にもとづいて優先順位をつけ、根拠をもって判断した記録があることが、理事を守ります。

資産価値への影響

建物の状態は、住戸の売却や賃貸に影響します。

  • 外観の劣化は、内見時の印象を左右する
  • 修繕の履歴は、購入希望者が確認する項目
  • 長期修繕計画と積立金の状況も、確認の対象になる

そして、積立金が不足している状態は、購入希望者にとって将来の負担を意味します。

修繕を先送りしている管理組合は、その事実が資産の評価に反映されることがあります。

「延ばす」と「放置する」は違う

先送りが常に誤りだ、という話ではありません。

根拠のある延期であれば、合理的な判断です。

  • 建物診断の結果が、まだ余裕を示している
  • 部分的な補修で対応できる状態である
  • その間に資金計画を立て直す

この形であれば、記録に残せます。 総会でも説明できます。

問題なのは、判断せずに時間が過ぎることです。

  • 検討を始めないまま、年数が経つ
  • 診断もせず、状態が分からない
  • 積立金の不足に、対策を取らない
先送りが「放置」になる兆候
  • 長期修繕計画が、10年以上見直されていない
  • 建物診断を、一度も行っていない
  • 積立金の不足が分かっているが、対策が決まっていない
  • 理事が交代するたびに、議論が振り出しに戻る
  • 前回の工事の記録が、残っていない

5番目が、状況を象徴します。 記録がなければ、判断のしようがありません。

延ばすなら、条件を決める

時期を延ばす判断をするなら、次を決めてください。

1. 何年延ばすのか2. その間に、何をするのか(資金計画、部分補修)3. どういう状態になったら、前倒しするのか4. 次に診断を行う時期

3番目を決めておくと、判断が続きます。 「漏水が出たら」「タイルの浮きが増えたら」という条件を先に決めておく。

そして、この判断を議事録に残し、次の理事へ引き継いでください。

※ 本記事は一般的な整理です。適切な判断は建物の状態によって変わります。

出典:建築基準法/国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」

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付録:本記事で使用した専門用語一覧

用語解説
下地補修仕上げの下にあるコンクリートのひび割れや欠損を直す工事。
剥落タイルなどが外壁から剥がれ落ちること。
定期報告制度建築基準法にもとづき、建築物の状況を調査して報告する制度。
建物診断建物の劣化の状況を調べる調査。
長期修繕計画将来の修繕内容・時期・費用を見通した計画。
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