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費用と資金 約4分で読めます

修繕積立金が足りないときの選択肢

選べる手は5つ。早いほど、選べる数が多い

修繕積立金が足りないときの選択肢

見積が出てきた。積立金の残高では足りない。

大規模修繕の検討で最も多い行き詰まりです。そして、多くの管理組合が同じ理由で足りなくなります。 個別の失敗ではなく、構造的な問題です。

まず、なぜ足りないのかを理解してください。 原因が分かれば、取るべき手も決まります。

なぜ足りなくなるのか

原因 内容
当初の設定が低い 分譲時に安く設定され、そのままになっている
段階増額の予定が実行されていない 値上げの合意が取れず、初期水準のまま
長期修繕計画を見直していない 工事費の上昇が反映されていない
工事の範囲が計画より広い 劣化が想定より進んでいた
駐車場収入が減った 空きが増え、充当できる額が下がった

2番目が最も多い形です。 新築時に段階的な増額を前提として計画されているのに、その値上げが実行されないまま年数が過ぎる。 結果、計画上の残高と実際の残高が乖離します。

国土交通省の令和5年度マンション総合調査によると、完成年次が新しいマンションほど積立金の額が低い傾向が見られます。分譲時に低く設定されることが背景にあると指摘されています。

平均額を知っておく

判断の基準として、公的な調査の数値を押さえておいてください。

指標 金額
1戸当たり月額の平均(駐車場使用料等からの充当額を除く 13,054円
同(充当額を含む 13,378円
前回調査(平成30年度)からの上昇 1,811円

「含む」と「除く」で額が違う点に注意してください。 自分の組合の額と比べるときは、同じ条件で比べる必要があります。

なお、面積あたりで比べるほうが実態に近くなります。 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では、建築延床面積の規模ごとに㎡あたり月額の目安と、事例の3分の2が収まる幅が示されています。自分の建物の規模に対応する数値を確認してください。

平均を下回っていること自体は、問題ではありません

必要な額は建物によって違います。判断の基準は、平均ではなく長期修繕計画です。

計画上の必要額に対して、残高と今後の収入が足りているかを見てください。

選べる手は5つ

それぞれ負担のかかり方が違う
選択肢 内容 難易度
① 積立金を値上げする 月額を上げ、将来に備える 合意形成が難しい
② 一時金を徴収する 不足分を一括で集める 最も反対が出やすい
③ 借入をする 工事を先に行い、後年度に返済する 総会の決議が必要
④ 工事の範囲を絞る 必要な部分に限定する 判断の根拠が要る
⑤ 時期を調整する 資金を貯めてから実施する 劣化の進行と相談

多くの場合、単独では解決せず、組み合わせることになります。

① 値上げ

根本的な解決になる唯一の手です。今回だけでなく、次回以降にも効きます。

ただし合意形成が最も重いため、時間がかかります。 工事の直前に持ち出しても間に合いません。

② 一時金

最も反対が出やすい方法です。数十万円単位の負担が、突然求められるためです。

支払えない世帯が出ると、滞納の問題に発展します。 分割の可否を含めて設計が要ります。

③ 借入

工事を予定どおり行いつつ、負担を後年度に分散できます。

管理組合向けの融資制度があり、住宅金融支援機構などが取り扱っています。総会の決議が必要で、返済原資は将来の積立金になります。

つまり、実質的には値上げとセットになります。 返済のぶん、月額が上がるためです。

④ 範囲を絞る

今回やらない部分を決めるという方法です。ただし、足場を組むタイミングでしかできない工事があります。

外壁、屋上、シーリング。足場が要るものを次回に回すと、次回また足場代がかかります。 単純に安くなるとは限りません。

建物診断の結果にもとづいて絞ってください。 「お金がないから減らす」ではなく「劣化が進んでいないから今回は見送る」という根拠が要ります。

⑤ 時期を調整する

劣化が進んでいなければ、有効な選択肢です。

ただし、漏水が出ている、タイルの浮きがあるといった状態であれば、先送りは費用を増やします。判断は診断の結果によります。

早く動くほど、選べる数が増える

工事の直前に足りないと気づくと、選べるのは②③④だけになります。

①は合意形成に時間がかかり、⑤は劣化が進んでいれば選べません。

逆に、数年前から動いていれば、①を軸に組み立てられます。 月額を段階的に上げていけば、一時金も借入も避けられる可能性があります。

だから、長期修繕計画の見直しを先送りしないでください。 見直しの時点で不足が分かれば、対応する時間が残ります。

理事として、記録を残す

この判断は、住民の負担に直結します。 後で「なぜこの方法を選んだのか」を必ず聞かれます。

  • 不足額がいくらか
  • どの選択肢を検討したか
  • なぜその方法を選んだか
  • 検討に使った資料(診断結果、見積、計画)

議事録に残してください。 そして、次の理事へ引き継いでください。

判断そのものより、判断の過程を残すことのほうが、後々効きます。

※ 本記事は公表資料をもとにした一般的な整理です。実際の判断は建物の状況と管理規約によって変わります。

出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査」(2024年6月公表)/国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」

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付録:本記事で使用した専門用語一覧

用語解説
修繕積立金将来の修繕に備えて、区分所有者から毎月集める資金。
段階増額積立方式当初を低く設定し、段階的に引き上げていく積立の方式。
均等積立方式期間を通じて同額を積み立てる方式。
一時金不足分を補うために、臨時に徴収する費用。
長期修繕計画将来の修繕内容・時期・費用を見通した計画。
建物診断建物の劣化の状況を調べる調査。
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