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費用と資金 約4分で読めます

積立金の値上げを、どう合意するか

工事の直前に持ち出すと、まず通らない

積立金の値上げを、どう合意するか

積立金が足りない。値上げするしかない。

理事としては当然の結論ですが、この議案は最も通りにくいもののひとつです。

理由は単純で、全員の毎月の支出が増えるからです。そして工事は、まだ先の話に見えます。

なぜ通らないのか

反対の背景 内容
負担が今すぐ増える 効果を実感するのは何年も先
必要性が伝わっていない 「足りない」という数字を見ていない
事情がそれぞれ違う 年金生活、住み替え予定、賃貸に出している
進め方への不信 なぜ今なのか、誰が決めたのか

3番目は、感情ではなく事実の問題です。

  • 高齢の区分所有者 — 年金からの支出が増える。工事の効果を受ける期間が短い
  • 近く売却を考えている人 — 自分が使わない工事のために払うことになる
  • 賃貸に出している所有者 — 居住していないため、実感が薄い

「みんなのため」という説明は、この人たちには届きません。 それぞれに違う事情があるためです。

いつ持ち出すか

工事の直前ではありません。

工事の見積が出てから「足りないので値上げします」と言うと、工事と値上げの両方に反対されることになります。

長期修繕計画を見直したときが、最も自然な時期です。

  • 見直しの結果、将来の残高が不足すると分かった
  • その事実を、総会で報告する
  • 対応の選択肢を示し、値上げを提案する

この順序であれば、値上げは「計画の結果」として説明できます。 唐突な提案ではなくなります。

不足が分かった時点で、まず共有してください

対策が決まっていなくても構いません。「このままだと足りない」という事実を先に出す。

対策の提案は、その次の総会でも間に合います。

説明の材料

数字で示す

感情ではなく、資料で説明してください。

材料 何を示すか
長期修繕計画の収支表 何年後に、いくら足りなくなるか
現在の残高と、月々の収入 今のペースでどうなるか
工事の概算 必要になる金額の規模
公的な目安 自分たちの水準がどのあたりか

1番目が最も強い材料です。 「残高がマイナスになる年」がグラフで見えると、議論が具体的になります。

4番目は補助的に使えます。 国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、修繕積立金の1戸当たり月額の平均が13,054円(駐車場使用料等からの充当額を除く)とされています。

また、国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では、建築延床面積の規模ごとに㎡あたり月額の目安が示されています。

ただし、平均と比べることには限界があります。 必要な額は建物ごとに違うためです。判断の基準は、あくまで自分たちの長期修繕計画です。

値上げの設計

一度に大きく上げると、反対が集中します。

方法 特徴
段階的に上げる 負担感が小さい。複数回の決議が要る場合がある
一度に必要額まで上げる 手続きが一度で済む。反対が強くなりやすい
一時金と組み合わせる 月額の上げ幅を抑えられる。一時金への反対が出る

1番目を選ぶ場合、いつ・いくら上げるかを最初に決めて示してください。 「とりあえず今回はここまで」だと、次の値上げでまた同じ議論になります。

将来の増額まで含めて一度に決議するという方法もあります。管理規約の定め方によって可能な範囲が変わるため、手続きを確認してください。

手続きを確認する

積立金の額をどう定めているかは、管理組合によって違います。

  • 管理規約に金額が書かれている場合 → 変更には規約の変更が必要になり得る
  • 総会の決議で定めている場合 → 決議の要件が異なる

必要な決議の種類を、議案を作る前に確認してください。 要件を満たさない方法で決めると、後から効力が争われます。

管理規約と、過去の総会議事録を確認してください。判断がつかない場合、マンション管理士や管理会社に確認することができます。

反対への向き合い方

値上げの議案で起きること
  • 「工事が終わってから考えればいい」という意見が出る
  • 高齢の区分所有者から、負担への強い反対が出る
  • 賃貸に出している所有者から、必要性への疑問が出る
  • 一部の反対で議論が止まり、次の総会に持ち越される
  • 値上げが通らず、一時金か借入を選ばざるを得なくなる

5番目が、実際に起きる結末です。 値上げを避けた結果、より負担の大きい方法しか残らないという形になります。

このことを、説明の材料にしてください。 「値上げをしない場合、どうなるか」を示す。一時金、借入、工事の縮小。それぞれの負担を並べると、判断がしやすくなります。

反対意見は、記録してください。 そして、次回の議案で答えてください。 一度で通らないことを前提に、複数回に分けて進めるという考え方もあります。

理事として引き継ぐこと

値上げは、一期の理事で完結しないことがあります。

  • 現在の不足額と、その根拠
  • 提案した内容と、反対の理由
  • 次に何をすべきか

この3点を次の理事へ引き継いでください。 引き継がれないと、毎回ゼロから説明することになります。

※ 本記事は公表資料をもとにした一般的な整理です。必要な手続きは管理規約によって変わります。

出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査」(2024年6月公表)/国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」

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付録:本記事で使用した専門用語一覧

用語解説
修繕積立金将来の修繕に備えて、区分所有者から毎月集める資金。
段階増額積立方式当初を低く設定し、段階的に引き上げていく積立の方式。
均等積立方式期間を通じて同額を積み立てる方式。
一時金不足分を補うために、臨時に徴収する費用。
管理規約管理組合の基本的なルールを定めたもの。
マンション管理士マンションの管理に関する助言を行う国家資格者。
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