契約した金額で終わると思っていたら、工事の途中で追加の請求が出てきた。
管理組合にとって、これは金額の問題であると同時に手続きの問題です。総会で決議した予算を超えると、その処理が必要になります。
そして、追加が出る項目は最初から分かっています。
追加が出る4つの場面
| 場面 | 内容 |
|---|---|
| ① 下地補修の数量が増えた | 足場を組んで調査したら、想定より劣化していた |
| ② 想定外の劣化が見つかった | 見えていなかった部分に問題があった |
| ③ 住民の要望で工事が増えた | 説明会や工事中に、追加の希望が出た |
| ④ 工期が延びた | 天候などで、仮設の期間が延びた |
①が圧倒的に多い形です。 そして、これは避けられません。
外壁のひび割れや、タイルの浮きの量は、全面に足場を組んで打診してはじめて確定します。 見積の段階では想定です。
つまり、①は「想定外」ではなく「想定の範囲内で動く項目」です。
契約で、扱いを決めておく
①への対応は、契約の方法で決まります。
| 方式 | 内容 |
|---|---|
| 数量精算 | 実際の数量で精算する。増えれば追加、減れば減額 |
| 数量固定(一式請負) | 想定の数量で金額を固定する |
どちらにも一長一短があります。
数量精算は、実際にやった分だけ払うという点で公平です。ただし、総額が確定するのは工事の終盤になります。
数量固定は、総額が最初に確定します。 ただし、想定より少なくても減額されないため、業者側が余裕を見た数量で見積ることになります。
重要なのは、どちらであるかを契約前に確認することです。
増えたときだけ追加され、減っても減額されない、という形は公平ではありません。
精算の方向が、双方向であるかを確認してください。
追加が出たときの手順
現場で口頭で決めないでください。
1. 施工会社から、書面で報告を受ける(何が、どれだけ、なぜ増えたか)2. 写真などの記録を求める(撤去してしまえば確認できない)3. 金額の根拠を確認する(契約時の単価が適用されているか)4. 理事会で判断する(誰が承認するかを事前に決めておく)5. 記録を残す
2番目が重要です。 下地補修の数量が増えたという報告を受けても、補修してしまえば元の状態は確認できません。 施工前の写真を必ず求めてください。
3番目も確認してください。 追加分の単価が、契約時の単価をそのまま使っているか。別の単価が適用されていないかを見てください。
誰が承認するかを、事前に決める
工事中に総会は開けません。 そのため、追加の承認を誰が行うかを事前に決めておく必要があります。
- 一定の金額までは理事会が承認する
- それを超える場合は臨時総会を開く
- 承認の記録を残す
この取り決めを、総会の議案に含めてください。 「工事に伴う軽微な変更は理事会に一任する」という形が使われます。
一任の範囲を、金額で示しておくと明確になります。 範囲が曖昧だと、後から「理事会が勝手に決めた」と言われます。
予備費という考え方
総会で決議する予算に、あらかじめ予備費を含めておくという方法があります。
- 追加が出たとき、その範囲内で対応できる
- 臨時総会を開かずに済む
- 使わなければ、積立金に戻る
ただし、予備費の使い道と承認の方法を明確にしてください。 「予備費があるから」と無条件に使えると、統制が効きません。
使った場合は、必ず報告してください。 何に、いくら使ったか。次回の総会で報告するという運用にしておくと、透明性が保てます。
③への対応
住民の要望による追加は、性質が違います。
- 工事の必要性から出たものではない
- 費用は組合の負担になる
- 一部の住民の要望である場合がある
説明会や工事中に「ついでにこれも」という要望が出ることがあります。 その場で受けると、費用も工期も増えます。
判断の手順を決めておいてください。 誰が受け付け、どこで判断し、どう決議するか。現場で職人に直接依頼されるという形は、必ず防いでください。
④への対応
工期が延びると、仮設の費用が増えます。
天候による遅れは、通常は追加費用にならない扱いが一般的です。ただし、契約で定めがないと争いになります。
- 天候による遅延の扱い
- 遅延した場合の仮設費の負担
- 工期を延長する場合の手続き
契約書で確認してください。
- 精算の方法を確認しないまま契約した
- 増額だけがあり、減額の規定がなかった
- 現場で口頭合意し、後から請求が来た
- 承認の権限が曖昧で、誰が決めたか分からない
- 施工前の写真がなく、増加の根拠を確認できない
最後の項目は、後から取り返せません。 報告の際に写真を求めることを、契約の段階で決めておいてください。
※ 本記事は一般的な整理です。実際の扱いは契約内容と管理規約によって変わります。
付録:本記事で使用した専門用語一覧
| 用語 | 解説 |
|---|---|
| 数量精算 | 実際の数量が確定した時点で、金額を精算する方式。 |
| 一式請負 | 数量の増減にかかわらず、契約した金額で行う方式。 |
| 下地補修 | 仕上げの下にあるコンクリートのひび割れや欠損を直す工事。 |
| 予備費 | 想定外の支出に備えて、予算に含めておく費用。 |
| 臨時総会 | 必要に応じて、通常総会とは別に開催される集会。 |
| 仮設工事 | 工事のために一時的に設ける設備の工事。足場や養生など。 |