見積書を並べたら、片方が税抜で、もう片方が税込だった。
比較になりません。 そして、この状態のまま総会に議案を出すと、決議した金額と実際の支払いが食い違います。
金額が大きい工事ほど、この差は無視できません。
管理組合にとっての消費税
まず、前提となる理解です。
事業者であれば、支払った消費税を仕入税額控除として扱える場合があります。しかし、管理組合は通常、そのような立場にありません。
つまり、支払った消費税は、そのまま組合の負担になります。
取り戻せない、純粋なコストです。
だから、税を含めた金額で資金計画を立てる必要があります。 税抜の金額で積立金の残高と比べると、判断を誤ります。
駐車場を外部に貸しているなど、課税される収入がある組合もあります。
個別の判断は、税理士または税務署にご確認ください。
見積の段階で、揃える
見積を依頼するときに、税抜か税込かを指定してください。
そして、両方を記載してもらうのが最も確実です。
- 工事費(税抜)
- 消費税額
- 合計(税込)
この3段で記載されていれば、比較でも決議でも使えます。
各社で表記が違うまま比較すると、金額の差を読み違えます。
総会で決議する金額
議案には、税込の金額を書いてください。
理由は単純で、組合が実際に支払うのは税込の金額だからです。
- 決議した金額が税抜だと、実際の支出が超過する
- 予算の執行として、説明が難しくなる
- 監査でも問題になる
「工事費◯◯円(税込)」と明記してください。
そして、予備費を含めるかどうかも決めてください。 追加が発生したときに、決議した金額を超えないようにするためです。
契約書でも確認する
- 契約金額が、税抜か税込か
- 消費税額が、明記されているか
- 追加工事が発生した場合の、税の扱い
- 支払いの各回における、税の扱い
3番目を確認してください。 追加分にも消費税がかかります。追加の見積も、税込で確認してください。
税率が変わる場合
将来、消費税率が変更される可能性があります。
そのとき、工事の契約と施工の時期がまたぐと、どちらの税率が適用されるかという問題が生じます。
過去の税率改定では、請負契約について経過措置が設けられてきました。一定の日までに契約したものについて、旧税率を適用するといった扱いです。
具体的な内容は、改定のたびに定められます。
税率の改定が予定されている時期に契約する場合、次を確認してください。
- 経過措置の内容と、その適用の条件
- 契約の時期と、引渡しの時期
- 見積の金額が、どちらの税率で計算されているか
判断は、税理士または税務署にご確認ください。 制度の細部は、そのつどの定めによります。
そして、税率の改定を理由に契約を急ぐ提案には、注意してください。 検討を省略する理由にはなりません。
実務上の確認事項
1. 見積を、税抜・消費税額・税込の3段で受け取る2. 各社の表記を揃えて比較する3. 総会の議案に、税込の金額を書く4. 契約書で、税の扱いを確認する5. 追加工事についても、税込で確認する
3番目が最も重要です。 ここがずれると、決議の範囲を超えた支出という形になります。
- 各社の見積で、税抜と税込が混在していた
- 総会の議案が税抜で、実際の支払いが超過した
- 追加工事の見積が税抜で、総額の把握を誤った
- 予備費を含めておらず、追加で決議が必要になった
- 税率改定を理由に、検討を急がされた
※ 本記事は一般的な整理であり、税務上の助言を行うものではありません。個別の判断は税理士または税務署にご確認ください。
付録:本記事で使用した専門用語一覧
| 用語 | 解説 |
|---|---|
| 仕入税額控除 | 事業者が、支払った消費税を納付額から差し引く仕組み。 |
| 経過措置 | 制度の変更にあたり、一定の場合に従前の扱いを適用する措置。 |
| 請負契約 | 仕事の完成を約束し、それに対して報酬を支払う契約。 |
| 予備費 | 想定外の支出に備えて、予算に含めておく費用。 |