金額が決まっても、いつ払うのかが決まっていなければ、資金の準備ができません。
そして管理組合の場合、支払いは組合の会計から行われます。 総会で決議した予算の範囲内で執行する必要があります。
理事は、組合の資金を預かって支払う立場です。
支払いの型
| 型 | 内容 |
|---|---|
| 完工後の一括払い | 工事の完了後に、全額を支払う |
| 着手金+完工払い | 着工前に一部、残りを完了後 |
| 出来高払い | 工事の進捗に応じて、複数回に分けて支払う |
大規模修繕では、3番目が使われることが多くあります。
工期が長く、金額も大きいためです。施工会社の側にも、材料費や人件費の支出が先に発生します。
出来高払いで確認すること
「出来高」とは、その時点までに完了した工事の割合です。
問題は、それを誰がどう確認するかです。
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| 出来高の算定方法 | 何をもって、何%完了とするか |
| 確認する者 | 施工会社の申告のみか、第三者が確認するか |
| 確認の方法 | 書面か、現地の確認か |
| 支払いの時期 | 確認の後か、申告の時点か |
| 記録 | 出来高の根拠となる資料が残るか |
2番目が最も重要です。
設計監理方式であれば、監理者が確認します。 責任施工方式では、確認する第三者がいません。
この場合、管理組合として何をもって承認するのかを、契約で決めておいてください。
「足場の設置完了で◯%」「外壁塗装の完了で◯%」というように、
工程の節目と支払いの時期を対応させると、確認しやすくなります。
前払いのリスク
着工前に大きな金額を支払うことには、リスクがあります。
- 工事が完了しない可能性
- 施工会社に問題が生じる可能性
- 支払った分に見合う工事が行われていない可能性
着手金そのものは、不自然な要求ではありません。 製品の発注や材料の手配に、実際に費用が発生するためです。
確認すること
- 総額に対する割合が妥当か
- 何に充当されるものか
- 工事が中止になった場合の扱い
- 保全の措置があるか
4番目を確認してください。 前払金について、保証の仕組みが用意されている場合があります。制度の有無と適用の可否を、施工会社に確認してください。
そして、着工前に総額の全部を求められた場合は、慎重になってください。 通常の形ではありません。
最終の支払いは、完了確認の後
この順序を守ってください。
1. 工事の完了2. 完了検査・引渡しの確認3. 手直しがあれば、その完了4. 請求5. 支払い
支払いを済ませた後だと、手直しへの対応が遅くなることがあります。
ただし、軽微な手直しを理由に支払い全体を止めるのは、適切ではありません。 範囲と期限を合意したうえで支払うという形が現実的です。
総会の決議との整合
管理組合に特有の論点です。
支払いは、総会で決議した予算の範囲内で行われる必要があります。
- 決議した金額と、契約の金額が一致しているか
- 支払いの時期が、会計年度をまたぐか
- 追加が発生した場合、予算の範囲内か
- 予備費を含めて決議しているか
2番目に注意してください。 工期が年度をまたぐ場合、予算の計上と執行の処理が必要になります。会計の担当者と、あらかじめ確認してください。
3番目については、追加の承認の範囲を総会で決めておくのが実務的です。 「一定の範囲内で理事会に一任する」という形です。
資金の準備
支払いの時期に、資金が用意できているかを確認してください。
- 積立金の残高が、その時点でいくらか
- 定期預金などで運用している場合、解約の手続きに要する時間
- 借入をする場合、実行の時期
- 一時金を徴収する場合、その回収の時期
2番目が見落とされます。 すぐに引き出せない形で保有していると、支払いの時期に間に合いません。
4番目も同様です。 一時金の徴収には、通知から入金までの期間が要ります。滞納が生じる可能性も考慮してください。
記録を残す
- 支払いの時期と金額
- その根拠(出来高の確認、請求書)
- 承認した者と、その日付
組合の会計として、監査の対象になります。 そして、総会で報告する必要があります。
支払いの記録は、工事の記録の一部です。 次回の長期修繕計画を作るときの、実績の資料にもなります。
- 出来高の確認方法が決まっておらず、申告のまま支払った
- 着工前の支払いの割合が大きく、リスクが高かった
- 完了確認の前に、最終の支払いをした
- 会計年度をまたぐ処理を、事前に検討していなかった
- 支払いの時期に、資金がすぐ動かせなかった
※ 本記事は一般的な整理です。支払条件は契約内容によって変わります。会計の処理については、管理会社または専門家にご確認ください。
付録:本記事で使用した専門用語一覧
| 用語 | 解説 |
|---|---|
| 出来高払い | 工事の進捗に応じて代金を支払う方式。 |
| 出来高 | その時点までに完了した工事の割合または金額。 |
| 着手金 | 工事の開始前に支払う代金の一部。 |
| 工事監理 | 工事が設計図書のとおりに行われているかを確認する業務。 |
| 予備費 | 想定外の支出に備えて、予算に含めておく費用。 |