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進め方と合意形成 約4分で読めます

住民の合意形成を、どう進めるか

反対の理由は3つに分かれる。同じ対応では通らない

住民の合意形成を、どう進めるか

工事の内容が固まり、見積も揃った。残るのは総会での決議です。

ここで止まる管理組合は少なくありません。そして、止まる理由のほとんどは、金額そのものではありません。

進め方への不信です。

反対は3種類に分かれる

種類 言われること 必要なもの
金額への反対 高い、負担できない 内訳の説明、資金の選択肢
必要性への疑問 まだ早い、そこまで要るのか 建物診断の結果
進め方への不信 どう決まったのか、なぜその会社か 検討の過程の記録

この3つは、対応が違います。 一律に「工事は必要です」と説明しても、2番目にしか届きません。

そして最も多く、最も根が深いのが3番目です。

進め方への不信が、最も厄介

「金額が高い」という発言の背後に、「勝手に決められた」という感情があることがあります。

この場合、金額の説明をいくら重ねても解決しません。 必要なのは、過程を見せることです。

  • 何社に見積を依頼したか
  • どういう基準で比べたか
  • なぜその会社に決めたか
  • 検討の途中で、どんな案を検討し、なぜ採用しなかったか

4番目が効きます。 「その案も検討したが、こういう理由で採らなかった」と説明できると、検討が尽くされたことが伝わります。

記録がないと、これができません。 合意形成のための作業は、実は検討の段階から始まっています。

理事会・委員会の議事録を、住民が見られる状態にしてください

閲覧できる場所と方法を周知するだけで、「隠している」という疑いが減ります。

見に来る人は少なくても、見られる状態にあること自体に意味があります。

情報は、早く・こまめに出す

総会の直前にまとめて説明する、という進め方が最も反発を生みます。

「もう決まっている話を、承認させられる」という受け取られ方になるためです。

検討の途中から、進捗を出してください。

時期 出す情報
検討開始時 大規模修繕の検討を始めること、委員会の設置
診断の後 建物の状態、必要と考えられる工事の範囲
見積の比較中 何社に依頼しているか、比較の観点
総会の前 案の内容、金額、資金計画

掲示板、書面の配布、必要なら回覧。 手段は組合の実情に合わせて構いません。

重要なのは、決まる前に情報が出ていることです。

アンケートで、先に意見を集める

反対は、総会より前に出させる

総会で初めて反対意見が出ると、その場で対応できません。

アンケートで、先に出させてください。

  • 工事についての意見や不安
  • 生活への影響で心配なこと
  • 費用についての意見
  • 改良工事(宅配ボックス等)への希望

出た意見には、必ず回答してください。 「いただいたご意見と回答」という形で、まとめて配布する。

これが説明会の資料にもなり、総会での質疑の準備にもなります。

同じ質問が繰り返されるのを防ぐ効果もあります。 一度書面で答えておけば、そのつど説明する必要が減ります。

説明会を開く

書面だけでは足りません。 顔を合わせて質問できる場が要ります。

  • 施工会社にも同席してもらう(技術的な質問に答えられる)
  • 平日夜と休日など、複数回に分けて開催する
  • 資料を事前に配布する
  • 出た質問と回答を、後日まとめて配布する

4番目を必ず行ってください。 参加できなかった住民にも情報が届きます。参加者だけが知っている状態は、不信の原因になります。

総会に向けた準備

決議に必要な要件は、工事の内容と管理規約によって変わります。 通常の修繕と、共用部の変更を伴う工事では、必要な賛成の数が異なる場合があります。

議案を作る前に、どの決議が必要かを確認してください。 要件を満たさない議案を出すと、可決しても後で問題になります。

そして、議決権の確保が実務上の課題になります。

  • 委任状・議決権行使書の提出を促す
  • 提出の方法を分かりやすく案内する
  • 期限前に、未提出の住戸へ声をかける

なお、2026年4月1日に施行された改正区分所有法により、決議の要件が変わりました。 区分所有権の処分を伴わない事項について、集会に出席した区分所有者及びその議決権の各過半数によることが可能となっています。

ただし、定足数の定めは管理規約によります。 そして、出席者を母数とするということは、出席した人の意見が相対的に重くなるということでもあります。内容の説明と同じくらい、手続きの案内が重要です。

全員の賛成は必要ない

合意形成で陥りやすいこと
  • 全員を納得させようとして、時期を逃す
  • 強い反対意見に引きずられ、検討が止まる
  • 説明を尽くしたつもりで、記録が残っていない
  • 一部の住民とだけ話し、他に伝わっていない
  • 総会の直前に、初めて情報を出す

1番目に注意してください。 反対が一人もいない状態を目指すと、いつまでも決まりません。

必要なのは、決議の要件を満たすことと、過程を説明できることです。

反対した住民にも、「意見は記録され、検討された」という状態を残してください。それが、工事中と工事後の関係を左右します。

※ 本記事は一般的な整理です。決議の要件は管理規約と工事の内容によって変わります。

出典:建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)・同法等の一部を改正する法律(令和7年法律第47号、2026年4月1日施行)

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付録:本記事で使用した専門用語一覧

用語解説
合意形成関係者の意見を調整し、決定に至る過程。
議決権行使書総会に出席せず、書面で賛否を示す書類。
委任状総会での議決権の行使を、他の人に委ねる書類。
建物診断建物の劣化の状況を調べる調査。
改良(グレードアップ)元の性能を超える状態にする工事。
区分所有法マンションの権利関係と管理について定めた法律。
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