大規模修繕は、総会の決議を経て実施します。 どれだけ検討を重ねても、ここを通らなければ進みません。
そして、この決議のルールが2026年4月1日に変わりました。
建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律(令和7年法律第47号)が2025年5月23日に成立し、2026年4月1日から施行されています。
何が変わったか
最も大きい変更は、決議の母数です。
これまで、管理や修繕に関する決議は「区分所有者及び議決権の各過半数」、つまり全区分所有者を母数として数えていました。
改正後は、区分所有権の処分を伴わない事項について、「集会に出席した区分所有者及びその議決権の各過半数」によることが可能となりました(改正後の区分所有法第39条第1項)。
つまり、欠席した区分所有者は母数から外れます。
これは、実務上きわめて大きな変化です。
- これまでは、無関心な区分所有者の欠席が、そのまま反対と同じ効果を持っていた
- 出席率が低いと、賛成が多くても要件を満たせないことがあった
- 改正後は、出席した人の中で判断される
所在の分からない区分所有者の扱い
もうひとつの重要な変更です。
区分所有者を知ることができない、または所在を知ることができない場合、裁判所の請求により、その区分所有者を決議の母数から除外できる制度が設けられました。
相続が繰り返されて所有者が分からなくなっている住戸や、長期にわたって連絡が取れない住戸がある管理組合では、これが決議を止める原因になっていました。
この問題に、法的な解決の道ができたことになります。
自動的に除外されるわけではありません。請求と認定の手続きを経る必要があります。
該当する住戸がある場合、早い段階で専門家に相談してください。
標準管理規約も改正されている
法律の改正と、自分の管理組合の規約は別のものです。
改正区分所有法は、2026年4月1日以降、すべてのマンションに適用されます。
一方、各管理組合の管理規約は、自動的には変わりません。 規約を改正するには、総会での決議が必要です。
国土交通省は、この改正を受けてマンション標準管理規約を2025年10月17日に改正しています。これは各組合が参照するひな形です。
理事として確認すべきこと
1. 自分の組合の管理規約が、いつ作られ、いつ改正されたか2. 改正法の内容と、規約の定めに食い違いがないか3. 規約の改正が必要かどうか4. 必要な場合、いつの総会で議案にするか
2番目は、専門家の確認が必要な部分です。 マンション管理士や、管理会社に相談してください。
決議の種類は、なお複数ある
すべての議案が同じ要件で決まるわけではありません。
工事の内容によって、必要な決議の種類が変わります。
| 内容 | 一般的な扱い |
|---|---|
| 通常の修繕(原状に復する工事) | 管理に関する事項として決議する |
| 共用部分の変更を伴う工事 | より重い要件が求められる場合がある |
| 管理規約の変更 | 別の要件が定められている |
| 建替えなど、区分所有権の処分を伴うもの | さらに重い要件が定められている |
2番目の判断が難しい部分です。 大規模修繕の多くは通常の修繕として扱われますが、共用部分の形状や効用を大きく変える工事が含まれる場合、扱いが変わることがあります。
改良(グレードアップ)の工事を含める場合、この点を確認してください。
議案を作る前に、どの決議が必要かを確定させてください。 要件を満たさない方法で可決しても、後から効力が争われます。
手続きは、なお丁寧に
決議が通りやすくなったことと、説明を省いてよいことは、別です。
改正で母数が出席者になったとしても、説明が不足していれば、出席者の中で反対されます。
そして、欠席した区分所有者にも、工事の費用は課されます。 説明が届いていなければ、工事が始まってから不満が出ます。
改正は、決議を通りやすくするための制度です。 合意形成を省略してよいという意味ではありません。
- 必要な決議の種類を確認しないまま議案を作った
- 管理規約が改正法に対応しておらず、規約と法律が食い違っていた
- 招集の手続き(通知の期限、議案の記載)に不備があった
- 議決権行使書や委任状の様式が不適切だった
- 決議の内容が議事録に正確に記録されていない
3番目に注意してください。 総会の招集には、通知の期限や議案の記載についての定めがあります。手続きに不備があると、決議そのものの効力が問題になります。
議事録を残す
決議の内容は、議事録に正確に記録してください。
- 議案の内容
- 出席者と議決権の数
- 賛成・反対の数
- 決議の結果
この記録が、後の説明の根拠になります。 そして、次の理事への引き継ぎ資料にもなります。
工事が終わった後で「どう決まったのか」と問われたとき、議事録が答えになります。
※ 本記事は公表資料をもとにした一般的な整理であり、個別の法的判断を示すものではありません。決議の要件は工事の内容と管理規約によって変わります。改正法への対応については、専門家にご相談ください。
出典:建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律(令和7年法律第47号、2025年5月23日成立、2026年4月1日施行)/国土交通省「マンション標準管理規約」(2025年10月17日改正)
付録:本記事で使用した専門用語一覧
| 用語 | 解説 |
|---|---|
| 区分所有法 | マンションの権利関係と管理について定めた法律。 |
| 議決権 | 総会において、区分所有者が持つ投票の権利。専有面積に応じて割り当てられることが多い。 |
| 所在等不明区分所有者 | 所有者を知ることができない、または所在が分からない区分所有者。 |
| 管理規約 | 管理組合の基本的なルールを定めたもの。 |
| 標準管理規約 | 国土交通省が示す、管理規約のひな形。 |
| 共用部分の変更 | 共用部分の形状や効用を変える工事。通常の修繕とは扱いが異なる場合がある。 |