総会の場で初めて反対意見が出る。そこから対応することは、できません。
意見は、総会より前に出させてください。 そのための道具が、アンケートと説明会です。
そして、集めた意見に回答することが、合意形成そのものになります。
アンケートは、3つの目的で行う
| 目的 | 内容 |
|---|---|
| 意見を集める | 不安、要望、反対の理由を先に把握する |
| 実態を把握する | 配慮が必要な住戸、賃貸の状況を知る |
| 参加してもらう | 「聞かれた」という事実が、進め方への納得につながる |
3番目を軽視しないでください。 意見を出す機会があったかどうかは、後から効いてきます。
「アンケートも取らずに決めた」と言われる状態を避けるためだけでも、実施する価値があります。
聞くべき項目
多すぎると回収率が下がります。 目的に絞ってください。
① 工事についての意見
- 大規模修繕の実施について、どう考えるか
- 心配なこと、疑問に思うこと
② 生活への影響で気になること
- 在宅の状況(日中在宅、在宅勤務など)
- 洗濯物、窓の開閉で困ること
- ペットの有無
③ 配慮が必要な事情
- 高齢の方、体調に不安のある方がいるか
- 小さな子どもがいるか
- 特別な配慮が必要なこと
④ 建物で気になっている不具合
- 漏水、ひび割れ、設備の不調
- 気づいている箇所
⑤ 改良工事への希望
- 宅配ボックス、防犯カメラ、照明のLED化など
④が意外に有用です。 住民は、理事が知らない不具合を知っていることがあります。診断の対象を絞る材料になります。
⑤は、期待を持たせすぎないよう注意してください。 「希望があれば必ずやる」と受け取られないよう、検討の材料として聞く旨を明記してください。
工事の連絡は区分所有者へ、生活の影響は入居者へ。連絡先が二重になります。
給排水など住戸内に入る工事があるなら、この把握が計画の前提になります。
回収率を上げる工夫
- 提出の方法を複数用意する(管理室の箱、ポスト投函、電子的な回答)
- 期限を明記し、少し余裕を持たせる
- 設問を絞る(多いと出されない)
- 記名か無記名かを明示する
- 何に使うかを、冒頭に書く
5番目が効きます。 「この結果をもとに、工事の範囲と進め方を検討します」と書いてあるだけで、回答の質が変わります。
記名にするか無記名にするかは、目的によります。 配慮が必要な事情を聞くなら記名が必要ですが、率直な意見を集めるなら無記名のほうが出やすいという面もあります。分けて実施するという方法もあります。
集めた意見には、必ず回答する
これが最も重要です。
「いただいたご意見と、それへの回答」という形で、まとめて配布してください。
- 出た意見を、そのまま載せる(個人が特定されない形で)
- それぞれに、管理組合としての回答を書く
- 検討中のものは、検討中と書く
回答できないものを、載せないという判断はしないでください。 「その点は現在検討中です」と書くほうが、無視されたと思われるより、はるかに良い状態です。
この資料が、説明会と総会の準備にもなります。 同じ質問が繰り返されるのを防ぐ効果もあります。
説明会の設計
書面だけでは足りません。 顔を合わせて質問できる場が要ります。
| 設計する点 | 内容 |
|---|---|
| 回数と日時 | 平日夜と休日など、複数回に分ける |
| 資料 | 事前に配布する。当日配布だけでは読めない |
| 出席者 | 施工会社にも同席してもらう |
| 進め方 | 説明の時間と、質疑の時間を分ける |
| 記録 | 出た質問と回答を記録する |
3番目が効きます。 技術的な質問に、理事が答えるのは無理があります。施工会社が同席すれば、その場で答えられます。
そして、施工会社の説明の姿勢を、住民に見てもらう機会にもなります。
説明会の後にやること
出た質問と回答を、後日まとめて配布してください。
- 参加できなかった住民にも、情報が届く
- 「参加者だけが知っている」状態を避けられる
- 総会での質疑の準備になる
これを省くと、説明会に参加しなかった住民が、総会で同じ質問をします。 そして「聞いていない」という不満が出ます。
資料は、専門用語を減らす
理事も専門家ではありません。 その理事が理解できない資料は、住民にも伝わりません。
- 工事の項目が、何をするものか一言で書かれているか
- 金額の内訳が、項目ごとに見えるか
- なぜその会社を選んだのかが書かれているか
- 費用の負担が、どうなるのかが書かれているか
4番目を明記してください。 積立金から出るのか、一時金が要るのか、値上げが伴うのか。住民が最も知りたいのはここです。
- 設問が多すぎて、回収率が低い
- 集めた意見に回答せず、そのままになる
- 説明会が1回だけで、参加できない住民が出る
- 資料が当日配布で、読む時間がない
- 出た質問への回答が、参加者にしか届かない
2番目が最も多い失敗です。 意見を集めておいて返さないと、アンケートを取ったこと自体が不信の材料になります。
※ 本記事は一般的な整理です。適した進め方は組合の規模と実情によって変わります。
付録:本記事で使用した専門用語一覧
| 用語 | 解説 |
|---|---|
| 合意形成 | 関係者の意見を調整し、決定に至る過程。 |
| 改良(グレードアップ) | 元の性能を超える状態にする工事。 |
| 区分所有者 | 住戸を所有している人。居住しているとは限らない。 |
| 賃借人 | 住戸を借りて居住している人。 |
| 建物診断 | 建物の劣化の状況を調べる調査。 |