見積が3社から届いた。金額を比べる前に、確認しておくことがあります。
その会社が、この工事を最後まで担える会社かどうかです。
金額の差は数%のこともありますが、会社の差は、工事中と工事後の何年にもわたって効いてきます。
確認できることから始める
公的に確認できる情報があります。 主観の入らない、最初の足がかりです。
| 確認すること | 見方 |
|---|---|
| 建設業許可 | 許可の業種と、許可番号。行政の検索システムで確認できる |
| 経営事項審査の結果 | 公共工事を受注する会社は公表されている |
| 所在地と事業年数 | 登記や会社概要で確認できる |
| 保険への加入 | 賠償責任保険、工事保険の加入状況 |
1番目は必ず確認してください。 大規模修繕の規模では、建設業の許可が必要になるのが通常です。
許可の有無だけでなく、どの業種の許可かも見てください。防水、塗装、建築一式。工事の内容に対応した許可があるかどうかです。
4番目も書面で確認できます。 工事中の事故で第三者に損害が生じた場合に備えるものです。証書の写しを求めて構いません。
現場に誰が立つのか
大規模修繕では、元請と実際の施工者が異なることがあります。 これは業界では一般的な形です。
問題は、それが説明されないまま進むことです。
- 現場代理人は誰か
- 監理技術者・主任技術者は誰か
- 実際に作業するのは、自社の職人か協力会社か
- 各工種(塗装、防水、シーリング)を誰が担うのか
「誰が現場に立つのか」を説明できるかを見てください。 説明できる会社は、体制を把握しています。
そして、工事中の窓口を確認してください。 住民からの質問や苦情を、誰が受けるのか。ここが曖昧だと、すべて理事に来ます。
保証とアフター
書面で示されるかどうかが判断材料です。
- 保証の対象(部位ごとに期間が違うのが通常)
- 保証の期間
- 対象外になるもの
- 点検の予定(何年後に、何を見るか)
- 連絡先と、対応の流れ
期間の長さだけで比べないでください。 長くても対象が狭ければ意味がありません。「何が対象か」のほうが重要です。
そして、その会社が存続していることが前提です。 保証の期間中に会社が無くなれば、保証は機能しません。事業年数や規模を見る理由の一つがこれです。
住民対応の姿勢
大規模修繕に固有の観点です。
住民が住んだまま工事が進むため、施工の技術と同じくらい、対応の質が結果を左右します。
| 確認する点 | 見方 |
|---|---|
| 工程表の細かさ | どの住戸が、いつ影響を受けるかまで示せるか |
| 住民への通知の方法 | 掲示だけか、各戸への配布もあるか |
| 苦情の窓口 | 現場に常駐者がいるか、連絡先が明確か |
| 説明会への参加 | 施工会社が説明する場を設けられるか |
| 過去の対応 | 苦情が出たときにどう対応したかを説明できるか |
5番目を聞いてみてください。 「苦情はありません」と答える会社より、「こういう苦情があり、こう対応した」と説明できる会社のほうが信頼できます。
苦情が出ない工事はありません。出ないと言うのは、把握していないか、言えないかのどちらかです。
見積の出し方も、判断材料になる
- 現地調査に、どれだけ時間をかけたか
- 数量の根拠を説明できるか
- 見積に含まれない項目を、自分から挙げたか
- 質問への回答が具体的か
- 提案の内容が、この建物に即しているか
3番目が最も分かりやすい指標です。 含まれないものを自分から言えるのは、範囲を把握している証拠です。
5番目も見てください。 どの建物にも当てはまる一般的な提案書は、この建物を見ていない可能性があります。
判断を、住民に説明できる形にする
理事が最終的に問われるのは、「なぜその会社を選んだのか」です。
- 確認した項目
- 各社の違い
- 選定の基準
- 選んだ理由
この4点を記録に残してください。 総会の資料になり、工事後の説明の材料にもなります。
「安かったから」だけでは、後で守れません。 何を見て判断したのかを、書いておいてください。
- 建設業許可や保険の確認を飛ばした
- 現場の体制を聞かないまま契約した
- 保証の内容を口頭で聞いただけで、書面がない
- 提案書を読み込まず、金額だけで決めた
- 選定の過程を記録せず、後で説明できない
※ 本記事は一般的な整理です。確認すべき事項は工事の内容と規模によって変わります。
付録:本記事で使用した専門用語一覧
| 用語 | 解説 |
|---|---|
| 建設業許可 | 一定規模以上の建設工事を請け負うために必要な許可。 |
| 経営事項審査 | 公共工事を受注する建設業者が受ける、経営状況等の審査。 |
| 元請 | 発注者から直接工事を請け負う会社。 |
| 現場代理人 | 現場において請負人を代理する立場の者。 |
| 監理技術者・主任技術者 | 工事の技術上の管理を行うために配置される技術者。 |
| 賠償責任保険 | 工事中に第三者へ与えた損害を補償する保険。 |