複数社から見積を取った。ここから、どう決めるか。
「一番安いところ」で決めるなら、手続きは簡単です。 しかし、それだけで選ぶと、後から問題が出ることがあります。
選び方には、いくつかの型があります。 そして、どの型で選ぶかを、依頼する前に決めておく必要があります。
2つの型
| 型 | 選び方 |
|---|---|
| 入札(価格競争) | 条件を揃えたうえで、価格で選ぶ |
| プロポーザル(提案の評価) | 価格に加えて、内容・体制・提案も評価する |
入札が成立するのは、条件が完全に揃っている場合だけです。
設計図書があり、数量も仕様も指定されている。その状態であれば、残る違いは価格だけになります。
設計監理方式では、この形が取りやすくなります。
条件が揃っていない状態で「一番安いところ」を選ぶと、範囲の狭い見積を選ぶことになります。
プロポーザルという考え方
価格以外も評価する方法です。
評価の観点
| 観点 | 見る内容 |
|---|---|
| 価格 | 総額と、内訳の妥当性 |
| 工事の内容 | 提案された仕様、工法 |
| 体制 | 現場の責任者、施工する会社 |
| 工程 | 工期と、住民への配慮 |
| 実績 | 同規模・同種の工事の経験 |
| 保証・アフター | 内容と期間 |
重要なのは、この観点を先に決めておくことです。
見積が出てきてから基準を作ると、「特定の会社に有利な基準を後から作った」と見られます。
依頼する前に決め、各社にも伝えてください。
参加してもらう会社を、どう集めるか
選定の母数が、結果を左右します。
- 管理会社からの紹介
- 設計コンサルタントからの紹介
- 組合が独自に探す
- 仲介する窓口を使う
- 公募する
1つの経路だけに依存すると、実質的に選択肢が絞られます。
経路を分けておくと、比較の意味が出ます。
そして、参加を依頼するときに、次を伝えてください。
- 何社に依頼しているか
- 選定の基準
- 提出の期限と様式
- 決定の時期
「何社と競合しているか」を伝えることには、意味があります。 各社が真剣に検討する材料になります。
評価の手続き
手続きを、記録に残る形で行ってください。
1. 評価の基準と、配点を決める(依頼の前に)2. 各社の提案と見積を、同じ様式で整理する3. 委員会または理事会で、評価する4. 評価の結果を、記録する5. 選定の理由を、文書にまとめる
1番目を先に決めることが、透明性の基本です。
そして、複数人で評価してください。 一人の判断では、後から「特定の人が決めた」と言われます。
評価表を作ると、議論が整理されます。 観点ごとに各社を並べ、差がどこにあるかを可視化する。
開札・開示のしかた
入札の場合、開札の場をどう設けるかを決めてください。
- 委員会の場で、複数人の立会いのもとで開封する
- 結果を記録する
- 各社に結果を通知する
この手続きが、後の説明を可能にします。
プロポーザルの場合も、同様です。 提出された内容を、いつ、誰が、どう評価したかを記録してください。
不調になった場合
予定していた金額を、全社が大きく超えることがあります。
このとき、次の選択肢があります。
- 工事の範囲を見直し、再度依頼する
- 資金の調達方法を変更する
- 時期を延期する
- 参加する会社を増やして、再度実施する
「一番安いところと交渉する」という方法もありますが、慎重に扱ってください。
条件を変えて交渉すると、他社との公平性が問題になります。 そして、削られた部分が何かを確認する必要があります。
範囲を見直して全社に再依頼するほうが、手続きとしては明確です。
辞退への対応
依頼した会社が、参加を辞退することがあります。
- 日程が合わない
- 規模や内容が、自社に合わない
- 条件が厳しい
理由を聞いておいてください。 条件に無理がある場合、それ自体が検討の材料になります。
参加が1社だけになった場合、比較になりません。 その状態で決めるのか、参加者を増やして再実施するのかを判断してください。
総会での説明に、そのまま使える
この手続きを踏んでおけば、総会の資料が揃います。
- 何社に依頼したか
- 選定の基準は何か
- 各社の評価はどうだったか
- なぜその会社を選んだか
理事が最終的に問われるのは、この4点です。
- 評価の基準を、見積が出てから作った
- 一人が評価し、記録が残っていない
- 参加が1社のみで、比較にならなかった
- 不調のあと、1社とだけ交渉した
- 選定の理由を文書にせず、後から説明できない
※ 本記事は一般的な整理です。適切な手続きは組合の規模と実情によって変わります。
付録:本記事で使用した専門用語一覧
| 用語 | 解説 |
|---|---|
| 入札 | 条件を揃えたうえで、価格を提示させて選定する方法。 |
| プロポーザル | 価格に加え、提案の内容や体制も評価して選定する方法。 |
| 設計図書 | 工事の内容を示す図面と仕様書。 |
| 開札 | 提出された入札の内容を開封し、確認すること。 |
| 不調 | 予定した条件で成立しなかった状態。 |