大規模修繕で、住民から見て最も分かりやすい工事が外壁塗装です。色が変わり、建物が新しく見えます。
しかし、塗装の品質を決めているのは、塗る前の工程です。
そして、色の決め方は住民の合意に直結します。
工程の順序
| 工程 | 内容 |
|---|---|
| ① 高圧洗浄 | 汚れ、旧塗膜の弱くなった部分、カビを落とす |
| ② 下地補修 | ひび割れ、欠損、浮きを補修する |
| ③ シーリング | 目地の打ち替え、増し打ち |
| ④ 養生 | 塗らない部分を覆う |
| ⑤ 下塗り | 下地と上塗りを密着させる |
| ⑥ 中塗り・上塗り | 仕上げの塗料を塗る |
⑥だけが「塗装」に見えますが、品質を決めているのは①〜⑤です。
①が不十分だと、塗料が密着しません。 汚れや弱った旧塗膜の上に塗っても、そこから剥がれます。
②を省くと、ひび割れが塗膜の下に残ります。 見た目は隠れますが、水は入り続けます。
⑤も省けません。 下塗りは下地と上塗りをつなぐ役割で、ここを薄くすると塗膜が長持ちしません。
「外壁塗装 一式」では、何回塗るのかも分かりません。
下塗り・中塗り・上塗りの回数と、使用する材料が書かれているかを見てください。
塗料の種類
塗料には複数の種類があり、耐久性と価格が対応しています。
| 種類 | 傾向 |
|---|---|
| アクリル系 | 安価。耐久性は最も低い |
| ウレタン系 | 中程度。柔軟性がある |
| シリコン系 | マンションでよく使われる |
| フッ素系 | 高耐久。価格も上がる |
| 無機系 | 高耐久。汚れにくいとされる |
耐用年数は、メーカーが公称する期待値です。 実際の持ちは、下地の状態、施工の質、立地の条件によって変わります。
日射の強い南面と、北面では劣化の速度が違います。 同じ塗料でも、面によって差が出ます。
「高耐久なら得」とは限らない
判断の基準は、次の大規模修繕までの期間です。
塗料の耐用年数が修繕周期を大きく上回っても、次の工事のときにはどのみち塗り替えます。 足場を組む機会に合わせて塗り替えるためです。
つまり、周期を超える部分の耐久性には、費用に見合う効果が出にくいことになります。
一方、周期より短い塗料を選ぶと、次の工事の前に劣化します。
修繕周期と、塗料の想定される耐久性を照らして選んでください。 これが最も合理的な考え方です。
ただし、周期を延ばす計画があるなら、話が変わります。 高耐久の塗料を選び、次の周期を延ばすという設計も成立します。塗料の選択と、長期修繕計画は連動しています。
色の決め方
技術的な話ではありませんが、合意形成では最も揉める部分です。
- 全員の好みが一致することはない
- 大きな面積で見ると、小さなサンプルと印象が変わる
- 一度塗ると、次の修繕まで変えられない
サンプルは、大きなもので確認してください。 小さな色見本と、建物一面では印象がまったく違います。
可能であれば、実際に外壁の一部に試し塗りをしてもらう方法があります。日向と日陰、晴天と曇天で見え方が変わるため、複数の条件で見ると判断しやすくなります。
決め方も設計してください。
| 方法 | 特徴 |
|---|---|
| アンケートで候補を絞る | 参加感がある。意見が割れると決まらない |
| 委員会が数案に絞り、総会で決議する | 進みやすい。選定の理由の説明が要る |
| 専門家に提案してもらう | 根拠を示せる。費用がかかる場合がある |
2番目が現実的です。 ただし、なぜその案に絞ったのかを説明できるようにしてください。
周辺との調和も検討の材料になります。 地域によっては、景観に関する条例や地区計画で色彩の基準が定められていることがあります。事前に確認してください。
確認すること
- 使用する塗料の製品名とグレード
- 下塗り・中塗り・上塗りの回数
- 塗装する範囲(どこまで塗るか)
- 高圧洗浄と下地補修が、別項目で計上されているか
- 保証の対象と期間
4番目に注意してください。 洗浄と下地補修が塗装の単価に含まれているのか、別項目なのか。会社によって計上の方法が違うため、比較のときに揃える必要があります。
※ 本記事は一般的な整理です。適した仕様は建物の条件と立地によって変わります。
付録:本記事で使用した専門用語一覧
| 用語 | 解説 |
|---|---|
| 高圧洗浄 | 高圧の水で外壁の汚れや旧塗膜を落とす作業。 |
| 下地補修 | 仕上げの下にあるコンクリートのひび割れや欠損を直す工事。 |
| 下塗り | 下地と上塗りを密着させるために塗る層。 |
| 塗膜 | 塗装によって形成される膜。 |
| 養生 | 塗らない部分を覆って保護すること。 |
| 期待耐用年数 | メーカーが想定する、性能が保たれる年数の目安。 |