タイル張りの外壁は、見た目に劣化が分かりにくい部分です。表面はきれいでも、内側で浮いていることがあります。
そして、浮いたタイルは落ちます。 高所から落ちれば、人身事故になります。
だから、この部分だけは法令で調査の仕組みが定められています。
建築基準法の定期報告
建築基準法第12条にもとづく定期報告制度があります。対象となる建築物の所有者・管理者は、定期に調査を行い、結果を特定行政庁に報告する義務を負います。
外壁のタイル等については、平成20年国土交通省告示第282号で調査の方法が定められています。
| 調査 | 頻度 |
|---|---|
| 手の届く範囲の打診等 | おおむね6か月〜3年以内に一度 |
| 落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面的な打診等 | おおむね10年に一度 |
「全面打診」と呼ばれるのが、2番目です。
対象になるかどうかは、特定行政庁の指定によります。 すべての建物が対象とは限りません。自分の建物が該当するかを、管理会社または特定行政庁に確認してください。
なお、報告を怠った場合や虚偽の報告をした場合、罰則の対象になります。
全面打診と、大規模修繕の時期
ここが実務上、最も重要な点です。
告示では、全面打診が必要になる場合でも、3年以内に外壁の改修等が行われることが確実である場合などは除かれるとされています。
つまり、大規模修繕の予定があれば、その工事の中で対応できる可能性があります。
逆に言えば、修繕の予定がないまま10年を超えると、調査のためだけに足場が必要になることがあります。
足場を組む機会は、そう何度もありません。
全面打診の時期と大規模修繕の時期を揃えると、足場代が一度で済みます。
打診と赤外線調査
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 打診 | テストハンマーで叩き、音の違いで浮きを判断する |
| 赤外線調査 | 表面温度の差から浮きを推定する |
打診は、足場やゴンドラが必要です。 直接触れる必要があるためです。精度は高いのですが、費用と手間がかかります。
赤外線調査は、離れた位置から調べられます。 令和4年1月の告示の一部改正により、無人航空機(ドローン)による赤外線調査で、打診と同等以上の精度を有するものが調査方法として明確化されました。
ただし、精度の判定には基準があります。 一般財団法人日本建築防災協会がとりまとめたガイドラインが参照されるとされており、誰がどう撮っても認められるわけではありません。
赤外線調査は、天候や日射の条件にも左右されます。 依頼する場合、どの方法で、どういう条件で調査するのかを確認してください。
補修の方法
浮きが見つかった場合、状態に応じて補修の方法が変わります。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| アンカーピンニング | 浮いた部分にピンを打ち、樹脂で固定する |
| 樹脂注入 | 浮きの隙間に樹脂を注入して接着する |
| 張り替え | タイルを撤去し、新しいものを張る |
| 全面的な改修 | 広範囲に及ぶ場合、外壁の仕上げ自体を見直す |
3番目には、色の問題があります。 経年で色が変わっているため、新しいタイルは目立ちます。
既存と同じタイルが手に入らないこともあります。 廃番になっている場合、近い色を選ぶことになります。どの程度目立つかを、事前に確認してください。
数量が確定するのは、調査の後
タイル補修は、見積の段階では想定の数量です。
全面に足場を組んで打診してはじめて、浮きの枚数が確定します。
- 見積では、想定の枚数で計上されている
- 実際の数量は、調査後に確定する
- 増えれば追加、減れば減額(契約による)
精算の方法を、契約前に確認してください。 これが追加費用の主要な原因のひとつです。
放置した場合
- タイルが落下し、人身事故につながる
- 落下の責任を、所有者・管理者が問われる可能性がある
- 浮きの範囲が広がり、補修の量が増える
- 隙間から水が入り、内部の劣化が進む
- 定期報告の義務を果たしていない状態になる
1番目と2番目が、他の劣化と決定的に違う点です。
外壁の色あせや、シーリングの劣化は、放置しても直接誰かに危害を加えることはありません。 タイルの剥落は違います。
費用の都合で先送りする判断の対象には、なりにくい部分です。
理事として確認すること
1. 自分の建物が、定期報告の対象か2. 前回の全面打診は、いつ行ったか3. 次の全面打診の時期はいつか4. 大規模修繕の時期と、揃えられるか5. 前回の調査結果が、記録として残っているか
5番目が抜けていることが多くあります。 前回の調査で、どこに浮きがあったか。その記録があれば、今回の劣化の進行が分かります。
今回の調査結果も、必ず保管して次へ引き継いでください。
※ 本記事は公表資料をもとにした一般的な整理です。定期報告の対象と調査の方法は、建物の条件と特定行政庁の定めによって変わります。
出典:建築基準法/平成20年国土交通省告示第282号(令和4年1月一部改正)/国土交通省「定期報告制度における外壁のタイル等の調査について」
付録:本記事で使用した専門用語一覧
| 用語 | 解説 |
|---|---|
| 定期報告制度 | 建築基準法にもとづき、建築物の状況を調査して特定行政庁へ報告する制度。 |
| 特定行政庁 | 建築基準法の事務を扱う行政機関。 |
| 打診調査 | テストハンマーで叩き、音の違いから浮きや剥離を判断する調査。 |
| 赤外線調査 | 表面温度の差から、浮きを推定する調査。 |
| アンカーピンニング | 浮いたタイルにピンを打ち、樹脂で固定する補修方法。 |
| 剥落 | タイルなどが外壁から剥がれ落ちること。 |