大規模修繕の工期は、延びることがあります。
そして、遅れると費用と住民の負担の両方が増えます。
原因によって、扱いが変わります。 どこまでが想定内で、どこからが問題なのかを、先に整理しておいてください。
遅れる原因
| 原因 | 性質 |
|---|---|
| 天候 | 避けられない。通常は追加費用にならない扱いが一般的 |
| 数量の増加 | 下地補修などが想定より多かった |
| 材料の納期 | 発注のタイミングと供給の状況による |
| 住民対応 | 立ち入りの調整、苦情への対応 |
| 施工会社側の事情 | 人員の不足、他現場との調整 |
| 管理組合側の事情 | 判断の遅れ、追加の要望 |
1番目は、外構や屋外の工事に共通する制約です。
コンクリートや塗装は、雨天に施工できません。 打った後も、乾燥や養生の期間が必要です。
梅雨や台風の時期は、特に工程が読みにくくなります。
遅れると、何が増えるか
足場の費用が、最も直接的です。
足場はリースであり、設置している期間に応じて費用がかかります。 工期が延びれば、その分が増えます。
そして、住民の負担も延びます。
- 洗濯物が干せない期間
- 窓を開けられない期間
- シートで室内が暗い期間
- 作業員が窓の外を通る期間
- バルコニーが使えない期間
「あと何日で足場が外れるのか」は、住民が最も気にする情報です。
遅れが出た場合、その見通しを早く共有してください。
契約で、扱いを決めておく
遅延の扱いは、契約に定めがないと争いになります。
| 定めておくこと | 内容 |
|---|---|
| 天候による遅延 | 追加費用の対象になるか |
| 遅延した場合の仮設費 | 誰が負担するか |
| 工期を変更する手続き | 誰の承認が必要か |
| 施工会社側の事情による遅延 | どう扱うか |
| 完了の判定 | 何をもって完了とするか |
2番目が、金額に直結します。
天候による遅れは、通常は追加費用にならない扱いが一般的ですが、明記がないと請求されることがあります。
そして、どこまでが「天候による」ものかの判断も、争点になり得ます。
住民への説明
遅れたときに、最も問題になるのは説明の不足です。
住民は、工事が終わる日を前提に生活を組んでいます。
- 洗濯物を干せる日
- 窓を開けられる日
- バルコニーを使える日
「いつまで続くのか分からない」という状態が、最も不満を生みます。
対応
1. 遅れが分かった時点で、早く伝える2. 理由を説明する(天候、数量の増加など)3. 新しい見通しを示す4. 確定していない場合、いつ分かるかを伝える5. 工程表を更新して、掲示する
4番目が重要です。 「まだ分かりません」で終わらせず、「来週には見通しをお伝えします」と時期を示してください。
遅れを減らすためにできること
管理組合の側で、できることがあります。
- 判断を早くする(追加の承認、仕様の確定)
- 住民への周知を、確実に行う(立ち入りの調整が遅れないように)
- 契約を早めに結ぶ(材料の発注を早くできる)
- 工事の時期を、天候の条件で選ぶ
3番目が効きます。 材料や製品は、契約後に発注されます。 契約が遅れれば、その分だけ納期も後ろにずれます。
4番目も検討の余地があります。 梅雨や台風の時期を避けられるなら、そのほうが工程は読みやすくなります。ただし、総会の時期との兼ね合いがあります。
完了の判定
「完了」が曖昧だと、そこでも問題が起きます。
- 手直しが残っている状態は、完了か
- 足場の解体まで含めて完了か
- 記録写真や書類の提出は、完了の条件か
契約で定めておいてください。
そして、完了の確認を行う日を、あらかじめ決めておくと、日程が組みやすくなります。
- 遅延の扱いが契約になく、仮設費の負担で揉めた
- 遅れの見通しを共有せず、住民の不満が高まった
- 管理組合の判断が遅れ、それが工程に影響した
- 完了の定義が曖昧で、引渡しの時期が定まらなかった
- 工程表が更新されず、掲示が古いままだった
5番目は、小さなことのようで効きます。 掲示が実態と違うと、それだけで信頼が下がります。
更新した工程表を掲示する。 施工会社に、その運用を求めてください。
※ 本記事は一般的な整理です。実際の扱いは契約内容によって変わります。
付録:本記事で使用した専門用語一覧
| 用語 | 解説 |
|---|---|
| 工期 | 工事の着工から完了までの期間。 |
| 仮設工事 | 工事のために一時的に設ける設備の工事。足場や養生など。 |
| 養生 | 施工した部分を保護すること。コンクリートでは硬化を待つ期間も指す。 |
| 下地補修 | 仕上げの下にあるコンクリートのひび割れや欠損を直す工事。 |
| 工程表 | 各工事の時期と順序を示した表。 |