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工事中と工事後 約4分で読めます

次回の修繕に向けて、何を残しておくか

今回の記録は、10年後の理事のためのもの

次回の修繕に向けて、何を残しておくか

工事が終わり、足場が外れ、総会で報告した。理事としての役目は、ほぼ終わりです。

残っている作業が、ひとつあります。

記録を整理して、残すことです。

これは、今回のためではありません。 10年以上先の、次の理事のための作業です。

なぜ、これが必要なのか

次回の検討を始める理事は、次の質問から入ります。

  • 前回はいつ、何をしたのか
  • いくらかかったのか
  • どんな劣化があったのか
  • 何を使ったのか
  • どこに問題があったのか

記録がなければ、どれも答えられません。

そして、すべてをゼロから調べ直すことになります。 診断も、比較も、判断も、前回の蓄積なしに行うことになります。

多くの管理組合が、この状態にあります。 「前回の資料が見つからない」というのは、珍しいことではありません。

残すもの

分類 具体的なもの
診断 建物診断の報告書、調査の結果
検討の経緯 理事会・委員会の議事録、比較表
選定 依頼した会社、評価の基準、選定の理由
契約 契約書、設計図書、仕様書、見積の内訳
工事 記録写真、施工の報告書、変更の記録
費用 実際にかかった金額と内訳、追加の内容
保証 保証書、取扱説明書、点検の予定
住民対応 出た意見・苦情と、その対応
総会 議案と議事録

5番目と6番目が、次回に最も効きます。

前回どこをどう補修したかが分かれば、今回の劣化の進行が判断できます。 そして、実際にかかった金額は、次の長期修繕計画の根拠になります。

8番目も残してください。 どんな苦情が出て、どう対応したか。次回の準備がまったく変わります。

保管の方法を決める

どこにあるかが、分かる状態にする

最も多い失敗は、散逸です。

  • 理事長の自宅に置かれ、交代のたびに移動する
  • 複数の場所に分かれている
  • 電子データの保存先が分からなくなる
  • 引き継ぎのときに、一部だけが渡される

対策

1. 保管場所を一箇所に決める(管理室、または管理会社)2. 一覧を作る(何がどこにあるか)3. 電子化できるものは、電子化する4. 保存先を、複数用意する5. 引き継ぎ書に、保管場所を明記する

2番目が実務的です。 「大規模修繕(実施年)一式」という箱を作り、中身の一覧を表紙に貼る。 それだけで、次の理事が探せます。

3番目も検討してください。 紙は劣化し、場所を取ります。電子化しておくと、引き継ぎも共有も楽になります。

ただし、原本の扱いについては管理規約や実務の運用によります。 確認してください。

長期修繕計画に反映する

工事が終わったら、計画を更新してください。

  • 実施した内容と、その時期
  • 実際にかかった金額
  • 計画との差と、その理由
  • 次回の想定時期

3番目が重要です。 計画上の金額と実績が違った場合、その差は次回の計画にも影響します。

そして、次回以降の想定も見直してください。 回を重ねるごとに、周期は短くなり、設備の更新が加わります。

この見直しを行わないと、次の理事がまた古い計画を見ることになります。

積立金の水準も、確認する

工事の後は、残高が大きく減っています。

  • 現在の残高
  • 次回までの積立の見込み
  • 次回の想定費用
  • 不足が生じるか

不足が見込まれるなら、この時点で共有してください。

工事の直後が、最も説明しやすい時期です。 何にいくらかかったかを、住民が実感しています。

「次回に向けて、月々の積立を見直す必要があります」という説明が、最も通りやすいタイミングです。

総会で報告する

工事の完了を、総会で報告してください。

  • 実施した内容
  • 実際の費用と、予算との差
  • 追加が発生した場合、その内容と理由
  • 出た問題と、その対応
  • 保証の内容と期間
  • 次回に向けた課題

2番目と3番目を、明確に報告してください。 予算との差は、必ず確認されます。

6番目を入れることに、意味があります。 「今回はここが課題だった」と残しておけば、次の検討の出発点になります。

次の理事へ

引き継ぎ書に、次を書いてください。

  • 工事が完了した時期と、内容
  • 記録の保管場所
  • 保証の期間と、点検の予定
  • 長期修繕計画を、次にいつ見直すか
  • 積立金について、検討が必要なこと

3番目と4番目には、期限があります。 引き継がれないと、保証を使わないまま期間が過ぎ、計画の見直しも行われません。

記録は、判断を守るためのもの

このメディアの記事で、繰り返し書いてきたことがあります。

理事が最終的に問われるのは、「なぜこうなったのか」です。

金額の妥当性でも、工事の出来でもなく、判断の過程を説明できるかどうかです。

記録は、そのための道具です。

そして、その記録は次の理事も守ります。 前回の判断の根拠が残っていれば、今回の判断も、その延長として説明できます。

理事は交代します。 しかし、建物と管理組合は続きます。

今回の記録を残すことは、その連続性を保つ作業です。

記録が残らないと、次回に起きること
  • 前回の内容が分からず、診断からやり直す
  • 実際の費用が不明で、計画の精度が上がらない
  • 前回の劣化と比較できず、進行が判断できない
  • 同じ苦情に、同じ対応を繰り返す
  • 保証が残っているのに、使わないまま期間が過ぎる

※ 本記事は一般的な整理です。保管の方法は管理規約と実情によって変わります。

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付録:本記事で使用した専門用語一覧

用語解説
長期修繕計画将来の修繕内容・時期・費用を見通した計画。
建物診断建物の劣化の状況を調べる調査。
設計図書工事の内容を示す図面と仕様書。
記録写真工事の各段階を撮影した写真。品質と数量の確認に使う。
修繕積立金将来の修繕に備えて、区分所有者から毎月集める資金。
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