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会社選びと発注方式 約6分で読めます

相見積もりの比較表の作り方|3社の見積りを同じ土俵で比べる

比較表は、差を見つけて質問するための管理組合の道具

相見積もりの比較表の作り方|3社の見積りを同じ土俵で比べる

この記事の結論

  • 比較表は、どの見積が正しいかを決める表ではありません。各社の違いを見つけ、理由を質問するための表で、作るのも使うのも管理組合です。
  • 表は「前提」「金額」「条件と体制」の3枚に分けます。金額の表の行は、長期修繕計画の標準様式にある工事項目の並びにそろえると、計画とも照らし合わせられます。
  • 差の欄には、数量・単価・範囲・計上の場所のどれによる差かを書き、各社への質問と回答を日付つきで残します。

3社から見積が届いても、様式も項目の名前も会社ごとに違います。総額を並べることはできても、どこで差がついているのかは見えません。

見積の取り方は相見積もりの取り方——条件を揃える、1社の見積書の読み方は見積書の読み方(数量・単価・一式)で扱っています。この記事は、届いた見積を横に並べるための表の作り方に絞ります。

なぜ比較表が要るのか

国土交通省の「マンション改修マニュアル」は、施工会社に見積を求める方法のうち、各社が仕様・工事項目・数量を独自に設定する「提案型」では、ばらつきが出て適切かどうかを見極めにくく、総工事金額だけの判断になりやすいと注意しています。複数の会社から候補を選ぶ場合は、個々の見積の内容・単価・金額などを確かめ、金額に大きな差があればその理由を確認すること、施工者の能力や施工体制の聞き取りを別に行うことを挙げています。

(出典:国土交通省「マンション改修マニュアル」令和8年3月改訂、第1章1.5の4)(2)見積依頼・施工会社の募集と候補者選定、2026-10-22 確認)

比較表は、この「内容を確かめ、差の理由を聞く」作業を、理事会・修繕委員会の誰が見ても同じように追える形にするための道具です。

表は3枚に分ける

表 並べるもの 目的
前提 工事の範囲、仕様(塗料・防水の工法・シーリング材)、数量の拾い方、含まれない項目、精算の扱い、工期、税込・税抜 同じ工事の見積かを確かめる
金額 工事項目ごとの数量・単位・単価・金額 どこに差があるかを見る
条件と体制 現場の責任者、下請の構成、工程、支払条件、保証とアフター点検 金額以外の違いを見る

最初に埋めるのは「前提」の表です。 範囲や仕様が違えば、金額の差に意味はありません。前提の表は、項目ごとに各社の内容を書き、最後の列に「同じ」「違う」「要確認」のどれかを書きます。

前提の項目(記入の例) A社 B社 C社 そろっているか
外壁塗装の範囲 全面 全面 開放廊下側を除く 違う
屋上防水の工法 かぶせる工法 かぶせる工法 撤去する工法 違う
下地補修の精算 実際の数量で精算 実際の数量で精算 記載なし 要確認
税の扱い 税抜 税込 税抜 そろえる

「違う」「要確認」の行は、そのまま各社への質問になります。前提の違いが見つかったら、金額を比べる前に各社へ条件をそろえて出し直してもらうか、違いを残したまま比べる理由を記録します。

金額の表の行を決める

行の並びは、国土交通省の長期修繕計画標準様式(様式第3-2号)にある推定修繕工事項目の並びを借りると決めやすくなります。

区分 行の例
仮設 共通仮設、直接仮設
建物 屋根防水、床防水、外壁塗装等(躯体コンクリート補修・外壁塗装・タイル張補修・シーリングなど)、鉄部塗装等、建具・金物等、共用内部
設備 給水設備、排水設備など、今回の工事に含まれるもの
外構・その他 外構・附属施設、調査・診断・設計・工事監理等

(出典:国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」令和6年6月改定、長期修繕計画標準様式 様式第3-2号、2026-10-22 確認)

様式にない行として、最後に現場管理費・一般管理費(諸経費)と消費税を置きます。各社の項目名がばらばらでも、この並びに振り分ければ横に並びます。手元の長期修繕計画が標準様式に沿っていれば、計画の金額とも同じ行で見比べられます。

振り分けに迷った項目は、元の項目名を残したまま近い行に入れ、備考に「B社は下地補修を外壁塗装の単価に含む」のように書きます。

金額の表の列を決める

列 書くこと
工事項目 上の並びの名前と、各社の元の項目名
単位 ㎡・m・箇所・式。単位が違う行は、そのまま比べない
数量・単価・金額 会社ごとに3列ずつ
差の種類 数量・単価・範囲・計上の場所・想定の数量のどれか
質問と回答 質問した日、回答の要旨、回答のあった日

金額の大きい項目が「一式」になっている場合は、数量と単価に分けてもらってから行に入れます。分解の頼み方は見積書の読み方の記事で書いています。

各社の様式がそろわない場合は、内訳を出してもらうよう依頼できます。建設業法は、建設業者に工事の種別ごとの材料費・労務費などの内訳と工程ごとの日数を記載した見積書を作るよう努めることを求め、注文者から請求があれば、契約が成立するまでにその見積書を交付しなければならないとしています(第20条第1項・第4項)。

(出典:建設業法 第20条、2026-10-22 確認)

「差の種類」を書き分ける

差の種類 例 各社に聞くこと
数量 外壁の塗装面積が会社によって違う 拾った範囲と、もとにした図面
単価 同じ面積で単価が違う 材料の種類と、塗り重ねの回数などの工程
範囲 1社だけ項目がない 含めていない理由、別の行に入っていないか
計上の場所 諸経費を各工事の単価に含めている どの行に含めたか
想定の数量 下地補修の数量が違う 想定の根拠と、実際の数量での精算の扱い

比較表に「妥当」「割高」といった判定は書きません。 書くのは差の種類と、各社の説明です。説明を聞いたうえでどう評価するかは、委員会・理事会で話し合って決めます。評価の基準は、見積を依頼する前に決めておきます(入札・プロポーザルの進め方)。

同じマニュアルは、著しく低い価格を示した会社には、施工品質や工期が適切に担保されているか、積算の前提条件などを十分に確認しておく必要があるとしています。

(出典:国土交通省「マンション改修マニュアル」令和8年3月改訂、第1章1.5の4)(2)②発注先候補の選定、2026-10-22 確認)

最も安い列にこそ、質問を多く書きます。

扱いで気をつけること

  • 各社の見積の金額や内容を、ほかの会社に伝えない
  • 条件を変えたら、全社に同じ条件で出し直してもらう
  • 表に版の番号、作った日、もとにした見積の日付を書く
  • 作る人と確かめる人を分け、2人以上で見る

1つ目は、競争の前提を守るためです。見積の扱いと談合の関係は大規模修繕の談合問題でも触れています。

総会資料は1枚にまとめる

総会で配るのは、3枚の表を要約した1枚です。

欄 書くこと
会社 A社・B社・C社と、依頼した経路
総額 税込・税抜をそろえた金額
前提の違い 範囲・仕様で残った違い
主な差と理由 差の大きい項目と、各社の説明
体制 現場の責任者、下請の構成
選定の理由 委員会・理事会で決めた理由

3枚の表と質問・回答の記録は、議事録の添付として保管します。次の大規模修繕で、前回は何を基準に選んだのかを確かめる資料になります。

※ 本記事は、国土交通省の公表資料と法令をもとに、比較表の一般的な作り方をまとめたものです。表の形は、工事の内容と発注方式によって変わります。

よくある質問

比較表は、管理会社やコンサルタントに作ってもらってもよいですか

作業を頼むことはできます。その場合も、各行が元の見積のどの項目から来たかを委員会で確かめ、差の種類と質問・回答は委員会の記録として残してください。設計監理方式で設計図書と数量書が共通の前提になっていれば、表はかなり作りやすくなります。

見積の様式がばらばらで、行に振り分けられません

依頼のときに様式を指定するのが確実です。すでに届いている場合は、数量・単位・単価を分けた内訳を各社に求めます。どの会社にも同じ依頼をし、依頼した日と回答の日を記録します。

比較表を見れば、一番安い会社を選べばよいことになりますか

なりません。比較表で分かるのは差の場所と理由です。範囲が狭い、想定の数量が少ないといった理由で安くなっている場合もあります。体制や保証も含めて、事前に決めた基準で選びます。

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付録:本記事で使用した専門用語一覧

用語解説
比較表複数の見積を、同じ行と列にそろえて並べた表。
推定修繕工事項目長期修繕計画で、将来行うと見込む工事の項目。
一式数量と単価を分けずにまとめて計上する表記。
諸経費現場管理費や一般管理費など、個々の工事に直接はかからない費用。
精算実際の数量が確定した時点で、金額を確定させること。
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